Conditional Monte Carlo法の金融工学への応用
Conditional Monte Carloの金融への応用に関する論文があったので内容を一部紹介します。
Conditional Monte Carlo(以下、CdMCと記します)とは、大雑把に言えば、「今までのシミュレーションした情報」ともとに「条件付き期待値」を求めることで期待値を推定する方法です。
この論文では、「確率変数の和の推定」という例でこの手法の利点や応用例を多く説明しています。
素朴なモンテカルロ法では、を確率変数の和と定義したとき、を推定する際は、
で推定されます。(Iは定義関数)
CdMCでは、がi.i.d.で共通の分布関数Fを持つ場合、
と推定されます。
この方法は、以下の点で優れています。
1, が固定されているときは、従来の方法より分散が小さい
2, CdMCでシミュレーションをR回繰り返しての平均を取って推定した分布関数は、従来の方法でのR回のシミュレーションを繰り返して分布関数を得るより滑らかな関数が得られる。
2番目については、累積分布関数が連続ならばその平均も連続なのであることからすぐわかります。1番目は、以下の条件付き分散に関するRao-Blackwellizationの公式
]]
によって成り立ちます。
実は、興味があるのが1の分散を減らすことだけであるならば、別の手法を用いたほうが効率がいいです。(ここでは省略します。)2の「推定される分布関数が滑らかである」ことがポイントです。
この手法を用いてVaRという、金融機関でよく使われるリスク指標を推定する方法について説明します。
の水準のはより損失値が大きくなる確率がであることを表します。
数値としてほかの定義をすることもありますが、ここでは分位点で定義します。以下、分布関数Fは連続と仮定します。
素朴なモンテカルロ法でR回シミュレーションして推測すると
と定義したときの
が推測値となります。
これは確率変数がi.i.d.である場合より複雑ですが、それでも中心極限定理のような式が成り立ち、
ただし
となることが知られています。ここでを推定するのが必要になりますが、(は密度関数です)これはとても難しいことが知られています。
しかし、CdMCを用いると、を用いることでの密度関数を推定できます。 (この推定値は、の密度関数をとしたとき、]なので不偏推定量になります)
これを使うと、以下の定理より、分散を減少させることができます。
定理
を
の解と定義する。
長くなるのでこの辺にして、証明は次回行います。